母直伝のトリュフチョコの材料を確認しながら、美紀は沙耶と過ごした日々を思い出していた。

正樹が生死の境をさまよっていた時、親身になって世話をやいてくれた沙耶。

母が本当は鶏嫌いだったことを教えてくれた沙耶。

その時……
気付いたことがある。

そうあの言葉を聞いて、自分も鶏肉が苦手だったと解ったのだ。

何かがおかしい。
何かが違う。
でもそれが何なのかが解らない。

だから美紀は悩み苦しんだのだ。




 自分の素直な気持ちを聞いてもらいたいと、美紀は沙耶を訪ねる決心をした。


玄関先で美紀を見た時、沙耶は驚きの表情を浮かべていた。

でもすぐに美紀をハグして、茶の間に招き入れてくれた。


その家は珠希の実家だった。
沙耶は珠希の妹だったのだが、珠希が正樹と結婚するために家を出たために実家に残って両親の世話をしなければならなかったのだ。


珠希は沙耶に辛い役回りを押し付けたことを本気で悔いていた。
だから美紀も沙耶には頭が上がらない。
だから尚更、正樹が好きだなんて言えなかったのだ。

それでも美紀決意した。
沙耶に本心を聞いてもらいたいと……




 でもいざ沙耶を前にしても、ずっと思い悩んでいた美紀。

何から切り出したらいいのか……

何をどうするべきか……

言うか言わざるべきか判らない。

決意して訪ねて来ても尚、その胸を痛めていた美紀だったのだ。