トリプルトラブル

 美紀は後輩に、一イニングでの打者のプレー内容を聞いた。
どう見ても、秀樹が納得していない感じだったからだ。


「私も良く判らないんだけど、多分……でもああ言う汚い手を使う人が甲子園に出場出来ること自体信じられないけどね」

そう言いながら、膝に消しゴムを置いた。


「これがベース。この横に立っていた人が体を移動させる訳。ホンの少しでストライクゾーンが変わるの。だからボールの判定だった訳ね」


「それじゃ秀ニイは?」


「完璧なストライクだったはずよ。だからあんなに悔しがったのよ。その後のボークも、打席を外した振りをして誘ったのよ」


「酷い……」


「あんまり誉められたプレーじゃないわね。でも秀樹先輩偉いわよ。その後見事に立ち直ったもの」


「きっと直ニイが支えたのよ」
美紀はそう言いながら泣いていた。


納得出来ないプレーに負けた秀樹。
お調子者だからこその洗礼を受けて、きっと自分を責めていると美紀は思っていた。




 「ところで、カーブでもSFBでもないボールを投げていたように見えたのだけど、何か知ってますか?」


「あぁ、あれは確か大リーグの日本人ピッチャーが開発した魔球ですね」


「えっ!? もしかしたらワンシワーム!?」


「秀ニイは大君の家でBS放送の録画された映像をチェックしていたのです。家のテレビはアンテナが無くてね」
美紀は素直に貧乏体験を話す。

地デジ放送に変わって何とかBSとCS付きのテレビは買い換えた。
でも地デジのアンテナだけは、地方のプロレス中継を見るために元々取り付けられていたのだった。


「でも、二人は恋のライバルじゃ……」

彼女はハッとしたように美紀を見た。

そう……

その恋の中心人物は、今隣にいる美紀だったのだから。