「解っているわお義兄さんの気持ち。本当、お姉さんも一緒に行きたいに決まっている」

沙耶には、どんなに姉が悔しいかが解っていた。

自分だって一緒に行かせたいにだ。

だから此処に来て、一緒にワンセグで応援しようと思ったのだ。


(――お姉さん。充電出来る充電器用意したからね。楽しみに待っていてね)
沙耶はそう言いながら、充電さえしておけば何処でも携帯に充電出来る充電器を触っていた。




 その約束通り、沙耶は松宮高校の中継がある度に此処でガラケーを見た。


そのお墓の中に珠希の魂が居ると信じて……


「お姉さん、見辛くてごめんなさいね」
そう謝りながら……
見えないワンセグに耳を傾けた。

でも本当は、中継がある日だけではなかった。
珠希の魂を癒すために毎日此処に来ていたのだった。
美紀と一緒に甲子園に行ったことなど知らずに。




 八月十九日。
大会十二日目。
順調に勝ち進んだ松宮高校はベスト十六に残り、三回戦まで駒を進めていたのだった。


この試合に勝てばいよいよベストエイト。

準々決勝だ。

プロ野球の選手になりたいと、子供の頃から憧れている秀樹にとっては負けられない一戦になる。




 八月八日の第一試合から始まり、八日目の十五日には二回選。


今までは疲れた体を癒す時間はあった。
でも明日からはノンストップ。

そう思うだけで、武者震いしたくなる秀樹だった。




 八月八日。
松宮高校は開幕したての第一試合だった。

その日は三試合が行われて、五対三で勝った。
九日は四試合。
十日は四試合。
十一日も四試合だった。

翌十二日は三試合。
十三日は四試合。
十四日は生憎の雨で中止だった。

十五日は四試合。
十六日は四試合。
十七日は三試合。
十八日は四試合。
十九日は四試合。

第二回戦終了時点でベスト十六が決まり、三回戦終了時点でベストエイトが決まるのだ。


松宮高校は初日と、ベストエイトを決める最終日に戦うことになったのだった。