美紀が目を覚ますと、正樹はペンライトで地図を確認していた。


(――えっ、何で私此処に居るの?)
美紀には何が何だか解らなかった。


「図書館に行ってみる?」

それでも正樹の言葉に素直に頷いた。

正直なトコ、記憶が無かった。
何故正樹のカプセルの中に潜り込んだのか解らないのだ。

だから、無意識に行動に出たと思っていた。


美紀は自分の行為を恥じていた。
正樹を苦しめることだと頭の中では理解していた。

それでも抱いてほしくてたまらかった。

だから意を決して潜り込んだのだ。
そう思い、無理矢理納得させた。

でも何もなかったかのように優しく正樹は接してくれている。

正樹にはすまないと思いながらも、子供としか見てくれていないことを哀しんでいた。

物心ついた時から、誰に教わった訳でもなく……


『大きくなったらパパのお嫁さんになる』
と言っていた。

肩車されて、気持ちまで大きくなったせいだったのだろうか?

それとも、自分が本当の子供ではないと知っていたのだろうか?

美紀は本当に正樹を愛していた。
その身を狂おしいほど焦がしていた。




 美紀の正樹への愛は、珠希の憑依が影響している訳ではない。

何故なら、珠希が生存していた時点で既に正樹を思っていたからだ。


解っていた。本当は全て承知していた。


大阪までのドライブ中美紀が見つけた答え。

何時までも正樹の傍にいたい。

愛されていたい。
だった。


家族として愛されていたかった。

出来る事なら……
養女だと知りたくはなかった。


もっともっと正樹を愛してしまいそうだったから。


時には叔母の嫉妬もかった。

沙耶がお見合い話を持って来たのには、美紀を正樹から遠ざけようとする気持ちが込められたいたのだ。

正樹のファンだと言うのは嘘ではなかった。

でも姉の旦那を、旦那の初恋の娘にとられたくなかったのだった。


その人は沙耶の職場の同僚で、保育園時代からの心強い味方でもあったのだ。