全国高等学校野球選手権大会の前哨戦。

所謂、甲子園に出場する高校を決める地方大会が始まろうとしていた。


秀樹のツーシームは向かうとこ敵なしに思われた。


ボールを少し浅めの握り、親指は人差し指と中指の間の下におく。

人差し指と中指の間は其処にもう一本指が入る位開けて握り、ボールの縫い目に沿って、第一関節がかかるようにするのが基本だった。


握ったボールの一回転の間に二つの縫い目が見えるのをツーシームと言い、少し沈むボールになると言われている。


勿論伸びるボールのフォーシームも健在だった。
それもそのはずで、このフォーシームこそがストレートの基本中の基本だったのだ。

ツーシームがストライプだとしたら、フォーシームはボーダー柄。
同じストレートでも、握り方一つで全く違う球質になる。

秀樹はそう教えられた。

又読んだ本にもそう書いてあった。

でも本当は違っていた。
それは新コーチに指摘されて解ったことだった。




 ツーシームやフォーシームなどの名称の発祥は大リーグだった。
勿論日本にも古くから存在していたらしい。

珠が動くところから、ムービイングボールなどと呼ばれていたようだ。
又汚い手のボールとも言われていたそうだ。




 フォーシームとは、バックスピンを掛けたボールが一回転する時にシームと呼ばれている縫い目が四回見えることからだそうだ。

ツーシームも同様で、一回転する時にシームが二回見えることからだ。


秀樹は慌ててそれらの情報を確認した。




 ボールの空気抵抗を考えたら、縫い目は無い方が良い。

でも縫い目があることで後方に空気の渦が出来る。
空気抵抗はそれによって変わるのだ。
だからフォーシームとツーシームでは、同じバックスピンストレートでも球質は違ってくるのだ。


大リーグで使用する公式ボールは日本製より縫い目が高い。

だから効果は大きいそうなのだ。


でも新コーチはもっと興味深いことを言った。
大リーグに挑戦している日本の投手が、バックスピンストレートを新たに開拓したとのことだった。


秀樹は目を輝かせてこの話を聞いていた。