「実は中村さんのお母さんはパパの見合い相手だったんだって。俺がお寿司屋さんで引き合わせたらびっくりしてたよ」


「うん。家のお母さんはパパさんの追っかけだったの。沙耶おばさんとも親友だから……って!? えっ、本当ですか?」


「うん。パパはあれがきっかけで俺は美紀と結ばれることが出来たんだって感謝してたよ」


「もしかして、親同士が結婚していたら……大君が言ってた通りになってたりして。ホラ、『美紀ちゃんは俺のものだったのに』って言ってたでしょう?」


「ああ、覚えてる」
直樹君が呟いた。


『お母さん嬉しいよ。アンタが直樹君のお嫁さんになってくれて、これでやっと……、でも沙耶さん。私達はトコトンついてないね』

私はその時、母の言葉を思い出した。


(――もしかしたら沙耶さんもパパさんのことが好きだったのかな?

――二人で悪巧みしなければいいんだけど。

――そうだよな。
家のお母さん本当に直樹君のパパが大好きだから)

私は何気なくそう思った。




 「あれっ!?」


「何?」


「体が急に軽くなった気がする」

私の一言で直樹君は笑い出した。


「もしかしたら何か考えた?」


「そう言えば、家のお母さんは直樹君のパパが大好きだったな。って」

私の返事を聞いて直樹君は更に笑った。

「ア、ハハハ……、きっと今頃ママが慌てふためいてるよ」
直樹君は謎の言葉を私の耳元で囁いた。

それはきっと、直樹君にしか判らないことなんだろう。

だから私も直樹君に寄り添って笑い出した。


(――もう何があってもいい。私はただ直樹君だけを愛していこう)

私はもう一度誓った。


(――あれ!?

――私からママさんが抜けると……

――蟷螂どうするの!?

――料理どうするの!?)

どうやら慌てふためいているのは私の方のようだ。


(――ダーリン助けて)

私は直樹君に向かってアイコンタクトを送った。


そう……
直樹君は私のダーリン。
ボーイズラブなんて言われようが構わない。
世界一、この可愛い旦那様を愛してる。