朝の光を感じ目を開ける。


(――ん!? 此処一体何処?)
私は一瞬我を忘れていた。


眠気眼で横を見ると直樹と目が合った。


(――えっ!?)
私は思わず仰け反った。


直樹君は秀樹君のベッドの横で私の目覚めるのを待っていたようだった。


(――ヤバい。パジャマがはだけてた。

――お願いアッチ向いてて……)


でも直樹君はそんなことはお構い無しで、私の横に潜り込んできた。


嬉しいクセに気恥ずかしい。
私は思わず、直樹君の体を拒否していた。

それでも直樹君は強引だった。


軽く触れ合うキスを交わして行く内に、次第に深くなる。

何度も角度を変えては戻ってくる唇。

私は何時の間にか直樹君とのキスに溺れていた。

もう我慢出来ない。
私は自ら直樹君の唇を貪った。

それは私の愛が弾けた瞬間だった。


狭くてきしむ二段ベッド。
ちょうど真下は珠希さんの仏壇。
罰当たりだと思う。
でも止められない。


昨日は初めての夜なのに何もなかった。
直樹君は普段通りに?
二段ベッドの上段で眠ってしまったんだ。

仕方なくて私は、秀樹君が眠っていたという下段で眠ることにしたのだ。

だから嬉しい。
直樹君とのキスが嬉しい。

だから余計に、直樹君の全てが欲しくなった。




 「直樹君お願いがあるの。こんなこと言っても……。いえ、やっぱり恥ずかしい」


「ん!?」

直樹君の目が、それを言えと催促している。


「あのう……そのう……、初めてだから、直樹君のベッドがいい。此処だと秀樹君に悪いよ」

私は秀樹君のベッドを汚したくなかったのだ。
ま、単なる言い訳に過ぎないけどね。


私の言葉を受けて、直樹君は上部のベッドを見つめた。


「大丈夫なか? 彼処きっと此処以上に軋むし、下手すりゃぶっ潰れる」


「えっー!?」


「それでも彼処がいい?」

悪戯っ子のような目をして、催促している。
彼処で遣りたいと言わせようとしている。

直樹君の魂胆は見え見えだった。

でも……
それだからこそ私は頷いた。


直樹君の目が勝ち誇ったように輝いた。