「それは珠希が美紀に憑依したからだった。珠希は俺を天国に逝かせなくするために美紀の体に入り込んだんだ」


「私はそれに気付いたの。だから美紀ちゃんとお義兄さんを結び付けようとしたのよ」


「それでも俺は決意出来ずにいたんだ。大君に託すのが一番いいと思って……」


「やっぱり。それなら何で結婚したんだ。俺は今でも美紀ちゃんが大好きなのに!」

突然大君が吠えた。


「大辞めろ、みっともない」
直樹君が大君を止めた。


「直。お前はいいよなー、中村さんがいて。そうだ中村さん。直なんか辞めて、俺と結婚しよう。まだ籍にも入ってないんだろう。今からでも遅くはない」

大君は更に吠えまくっていた。




 「大君辞めて。みんな私の責任なの。恨むなら私を恨んで」
美紀ちゃんが仕方なく大君を受け止めた。


「美紀ちゃん!!」
大君は美紀ちゃんにとりすがって泣き出した。


「俺がこんなに好きなのを知ってるクセに」
大君はそのまま美紀ちゃんを離そうとしなかった。


「あぁー、やーめー」

美紀ちゃんのお祖父さんがうめき声を上げる。

遂に堪忍袋が切れたようだ。


「お祖父ちゃんいいの。今大君を受け止めたのは私じゃないと思う。きっとママよ。ママだと思うの」


「違う!! 今美紀の中にママは居ない!!」

直樹君が叫んでいた。


(――えっ!? それってどういうこと?)

私はただ直樹君の一言を待っていた。
それが試練のような気がして……




 「今ママは美紀の中には居ないんだ。ママは……」

直樹君はそう言って急に辞めた。
そしてその後パパさんに耳打ちしに行った。


「美紀! 大君から離れて!」
パパさんは言うが早いか、すぐに大君の前に立ちはだかった。


「掛かって来い!」
パパさんは本気モードだった。


「知っていて汚いぞ」
パパさんは大君の背後に回り、プロレス技を掛けようとしていた。


「わぁー!!」
大君はそれを間一髪で交わした。
そしてそのままスタスタ逃げ出した。


「驚かせてごめん。あんな奴でも俺の親友だ。中村さんとのことを祝ってほしくて呼んだんだ」
直樹君が申し訳なさそうに項垂れていた。