直樹君の家族と私の母は近くの寿司屋にいた。

七回忌の後の食事会だった。

何故母が其処に居るのか解らない。
誤るのは私一人でいい。
そう思っていた。


地域で一番大きな病院の近くだから私もこの店の前は良く歩いていた。


(――あの日も確か……)

でもどうして直樹君の家の近くに行ったのかも解らない。

私は一体どうしちゃったんだろうか?


「皆様、母の法事にお集まりいただきましてありがとうございます。早いものでもう七回忌なんですね」

秀樹君が立ち上がり、挨拶を始めた。


「母は凄い人でした。俺はそんな母から根性を貰いました。だからこのままでは終わりません。必ずプロ野球選手になってみせます」

みんな拍手喝采を送る。

そんな中で直樹も立ち上がった。




 「皆様、母の七回忌にご臨席を賜りありがとうございました。秀樹はああ言いましたが、俺はプロ野球に行く気はありません」

直樹君の発言に注目が集まる。
秀樹君の睨んだ視線に私は凍り付いていた。


「勿論秀樹は支えます。出来る限りやってみます。でも秀樹と違って俺には実力はありません。だから、今の仕事を頑張ります。俺の夢は、コーチのようになることです。そのために通信大学に通い、大と同じように先生になる勉強を始めました」

直樹君は苦しみながらも自分の進むべき道を既に見つけていたのだ。




 「秀樹のいう通り、母は凄い人でした。でも俺はその母以上に凄い人を身近な人に感じています。俺はその人が好きです」

直樹君はそう言うと、私の隣にやって来た。


「中村紫音さん。俺と結婚してください。この場で、皆様の見守る前で貴女と結婚式を挙げたいんです」


(――け、結婚!?)
あまりの出来事にどうすることも出来ない。
私はただ唖然としていた。


「何事にも一途な貴女に惚れました。これから先何が俺達を待っているか解らないけど……、俺は貴女と共に居たい。貴女の傍で笑っていたい」