それはやがて一石二鳥の効果を及ぼすことになる。

練習中に全ての部員達が審判力を付けたからだった。

珠希はやはりスーパーレディだった。
だから美紀は愛して止まないのだ。


その珠希の経験は、美紀の部活指導にも生かされていた。

美紀は積極的に部員達に自分の身に付けた物を残そうとしていたのだった。

それはやがて、美紀の夢にもつながることだった。


美紀の夢……
それは珠希の後を追うことだった。


国民体育大会に県民代表として出場すること。

でも今のままではいけないと思っていた。


美紀は更にソフトテニスを極めたいと思っていたのだった。




 フェンスの向こうでは大が球拾いをしている。


「それって、三年生がすることかい?」

大は突然聞こえてきた美紀の声に驚いて、持っていた球を落とした。

呆然と美紀を見つける大。


「何遣ってるの。ほら早くしないと

美紀は笑いながら言葉を掛けた。


その言葉に大はハッとして周りを見回した。

大慌ててボールを拾う姿は美紀には滑稽に写った。


「これでレギュラーだって言うんだから呆れるね」


「イヤなトコ見るなよ。これはなー、秀と直のサポートだよ」

大はそう言って、グランドに目をやった。

秀樹と直樹のバッテリーが、新入生に豪速球を披露していた。


「エースだからな秀は」
自慢げな大。

拾った玉を抱えグランドに戻った。




 秀樹はようやく、判りかけていた。
コーチの言った。
キャッチボールの意味が。


それは、チームだった。

幾ら凄いピッチャーが居たとしても、それを受けてくれるキャッチーが居ないと、ナイン全てが居ないと成り立たないと言うことが。

それに気付いたプレゼントとして、豪速球を披露する場を与えられたのだった。


野球部の要として育って行く秀樹と直樹。
美紀の自慢でもあった。

もっと見ていたかった。

美紀は後ろ髪を引かれながら、自転車に乗った。


でも美紀はその時気付いていなかった。
大が美紀に見とれてしることを……
どうやら大は美紀に恋をしてしまったようだ。