「なあ教えろや。何時取ったんだ」


「お前等がキャンプに行っている合間だよ。合宿免許ってのがあるだろう。あれだよ」


「合宿免許!?」


「何も遣ることがなくて暇だったからな」


「俺の自転車廻りと同じか?」
直樹君はそう言いかけて言葉を止めた。


「いけね。時間だ。続きは後で」

直樹君は慌てて、お昼ご飯を掻き込んだ。


「あ、駄目。もっとゆっくり食べて。後でお腹が痛くなっても知らないよ」

私の発言で直樹だけじゃなく、秀樹君までもが背筋を伸ばしていた。




 お昼を軽く済ませ、二人は自転車で練習場に行こおうとガレージに向かった。


「俺も大のように車の免許取っておけば良かったな」
秀樹君が自転車の後方に停めてあった外車を見ながら言った。


「やっぱりじいさん凄いな。俺もこんな何時か車に乗ってみたいよ」


「いや、美紀のじいさん気前良いから、乗っても良いって言うよ。なんなら、中村さんが乗ったら」

突然の秀樹君の言葉に首を振った。


「あのー、実は私も免許が無いんです」
慌ててそう言った。


(――そうなんだよ。私も免許がなかったんだ。

――だって東京で働くから要らないと思っていたんだよ)


そう、だから母は私を東京へ送り出してくれたのだった。

でもお金のことで迷惑掛けたくなかった。
とても免許が欲しいなんて言えなかったんだ。

だから母には、東京に行けば免許は要らないと言っていたのだった。