(――何?)
昨日から私を見る目がおかしい。

まるで、腫れ物にでも触るような態度だ。
でも、それは私を気遣ってくれているのだと思ってた。


(――きっと、本気でお爺さんに頼まれたと思っているんだ。

――悪いことしちゃったな)

私はみんなに嘘を付いていることが後ろめたくて仕方無かった。


全員が優しくて、家族のように親しくて、これ以上の嘘はつきたくはない。
でもそれを言うと私は此処には居られなくなる。


陽菜ちゃんとのルームシェアを考えてから、アルバイトで戴いた給料をせっせと貯めてきた。

でもその通帳を家に置いてきたのだ。
フラワーフェスティバルの後で陽菜ちゃんとルームシェアする家に行き、詳細を決めるはずだったから。


引っ越し業者に言われた、別料金。
あのままだったら、どうなっていたかも判らない。
手元にある僅かな現金だけでは自宅まで帰ることが出来ないと思ったのだ。


それがこの家に置いてもらった本当の理由だった。
他に手段はなかったのだ。


でもそれは単なる言い訳にすぎない。
私はせっかく逢えた直樹君と離れたくなくて嘘を言っただけなのだから。




 食事が済んだらみんなで後片付け。

私は自分ではないように感じた。

でもそれは、大好きな直樹君に喜んでもらうためだ。
私はそう勝手に判断した。


鉄製のフライパンをアルミホイルで磨いた後でIHコンロに掛ける。
充分乾いたら、油をひいた。


(――そう言えばお母さんもやっていたな

――あっ、そうか?

――全部お母さんのやっていたことなんだ。

――そうかだから、出来るんだ!!)

私は自分が天才ではないかと思っていた。

でもそれは、母から受け継いだ経験なんだと考えていた。