三月の寒い夜。
暑さ寒さも彼岸までとは言うけれど……


外にある水道で、慌てふためいて頭を洗う三人の姿が目に浮かぶ。

もう可笑しくて可笑しくて仕方ない。


「ク、ク、ク」
それはそれから始まった。

一旦笑い出すと止まらなくなった。

私はゲラゲラと大口を開けて爆笑していた。


大好きな人の前でやることじゃないと解っている。
でも私は、どうしても堪えることが出来なくなっていたんだ。

直樹君はそんな私に動揺しながらま、遠巻きに眺めていた。


でも何時までもそうしてはいられないとでも判断したのか?

直樹君は大きなスポーツバッグからこれ又大きな袋を取り出した。


「あっ、それが寝袋?」

私の質問に直樹君が頷いた。




 「ベッドメイキング大変だったでしょう?」

私は傍で寝袋の準備をしている直樹君に向かって声を掛けた。


「ううん。やり方解んないから結局使わなかったんだ」

直樹君は不思議なことを言った。


「それじゃ夕べは何処で眠ったのですか?」

私は返事を聞きたくて直樹を見つめた。


何だか判らないけど、私結構大胆になっている。
本当は相当シャイなんだけどね。


 「昨日は結局、部屋割りだけしてベッドは使わなかったんだ。みんなで外で話し合っていたから」


「外に何かあるの?」


「いや、ただ家で弁当が食べ辛かったんだ。汚すといけないかな? みたいになって……」


「あら、でもさっき引っ越し蕎麦食べたけど」


「あ、あれは中村さんが居たからだよ」

それがどんな意味か判らないけど、気を遣ってくれたのだと素直に思った。


(――優しいんだね直樹君。でも確か誰にでもそうだったか?)
私は、生徒会長としてみんなを率先していた直樹の姿に惚れ込んだ。

でもそれだけじゃない。
優しくて、気を配る人だから好きになっのだ。