「昨日は結局、部屋割りだけしてベッドは使わなかったんだ。みんなで外で話し合っていたから」


「外に何かあるの?」


「いや、ただ家で弁当が食べ辛かったんだ。汚すといけないかな? みたいになって……」


「あら、でもさっき引っ越し蕎麦食べたけど」


「あ、あれは中村さんが居たからだよ」

それがどんな意味か判らないけど、気を遣ってくれたのだと素直に思った。


(――優しいんだね直樹君。でも確か誰にでもそうだったか?)
私は、生徒会長としてみんなを率先していた直樹の姿に惚れ込んだ。

でもそれだけじゃない。
優しくて、気を配る人だから好きになっのだ。




 「それじゃ、一体何時その頭にしたの?」


「した。と言うのか、されと言うの……」

直樹は煮え切らなかった。


「大がふざけてビールを頭に掛けたんだ。いや、飲んではいないよ。ただ前夜祭的にビール掛けが始まったんだ」

その時頭の中で、大君がビール瓶を片手に直樹君を追い回す姿を想像した。

私はそれだけで楽しくなってきた。


(――でも一体何処からビールを持って来たの?

――この頃何処でも、未成年にアルコール類は売らないはずなのに……)


「ふっ、もう優勝気分ですか?」
それでも私は何故か急に笑いたくなった。




 「何笑ってるの。俺達だって馬鹿じゃないよ。せっかく決まったチームなんだから、首にはなりたくなかったし」


「それでも気分だけ楽しみたかった訳ですね。ああ、それでブリーチ?」

ビールで頭を洗うと髪の毛が脱色すると誰かが言っていた。
私はそれを思い出していた。


「うん、それを秀が言い出して……、慌てて閉店間近なドラッグストアでヘアカラーを買って来たんだよ」


「えっ、お風呂場で?」


「いや、外で……」
直樹君はそのまま口籠ってしまった。


「えっーーー!?」
私は自分自身の言葉に驚き、ベッドから飛び起きていた。