「直樹君の部屋でお願い致します」
私は力強く言った。
この際だから仕方ない。
私は開き直ったのだ。

本当はね。
とっても恥ずかしいんだけど……


「えっ、俺か?」

でも、直樹君の最初の言葉がそれだった。

見ると、直樹君の顔が青ざめていた。


(――私がそんなにイヤなの?)
言葉には出せないが、私は相当落ち込んでいた。


直樹君は憧れの君だよ。

本当は私だってイヤだよ。
私の寝相も寝言もみんな直樹君に見られるなんて恥ずかしいなんてものじゃないんだから。


だけど、やっぱり直樹君がいい。
でもどうしてだろう?
何で残ってる部屋を使えないんだろう?
其処があればこんな思いをしなくても済むのに……




 (――ひ、広い……)

直樹君に部屋へ案内されて驚いた。
直樹君の手がドアノブにかかった途端に垣間見た部屋は、母と二人で暮らしているアパート以上はあった。


(――こんなに大きな部屋ならベッド二つ位は置けるよね?

――良かった。これで寝相が悪くても直樹君に迷惑かからないね)

でも少しがっかり。


(――え、何で?

――何で変なこと考えているの?

――もしかしたら、いけないこと考えてる?)

私はまともに直樹君を見られなくなっていた。