その時私はある事実を思い出した。
私はすっかり忘れていた。

いや、上の空だった。

月末に七回忌の母親から頼まれるはずがなかったのだ。

直樹君がビックリするのは当たり前だったのだ。


ドキドキしていた。
上の空だった。
三人の目が気になる。
私は意気消沈しながらも其処にいるしか手がなかったのだ。


私は三人に案内されて庭に向かった。

其処は荒れていた。


フラワーデザイン装飾技能士三級の血が騒ぐ。
私の夢だった、自分の育てた花の花屋さん。
此処で試してみたくなったんだ。


「ごめんなさい!! 私が頼まれたのは、家事じゃないの。庭の手入れなの」
私は嘘の上に嘘を重ねていた。


大好きな直樹君と離れ離れになりたくないから此処に残る訳ではない。
私は心の中で言い訳をくりかえしていた。




 「俺達も昨日着いた時、この庭を見て驚いたんだよ」


「爺さんは寂しい人で、やっと出逢えた孫の傍を離れたくなくなったんだ」


「ホラ美紀だよ、美紀が爺さんの孫だったんだ」


「俺達が大阪の社会人野球チームに入ることになった時、庭もキレイにしたはずなのに……」


「一ヶ月も経たないうちにこうなったようだ。爺さんはそっちの方が心配だったんだな」


「そうだよな。俺達のことより、家や庭の管理だな。よし、そうと決まったら早速ルームシェアだな」


「ルームシェア?」


「住める部屋は六個。そのうち三個は事情があって使えないんだ。だから残りの三個を俺達で割り振ったばかりなんだよ」




 「兄貴や俺とは違い、大は教師になるために勉強しなくちゃいけないから、俺達が相部屋なら問題ないな」


「俺はヤだよ。やっと一人部屋になったんだ。これからは手足が伸ばせる生活をしたいんだ」


「何言ってるんだ兄貴。二段ベッドでも同じようなものだったくせに」

直樹君はそう言いながら笑いだした。


「中村さん。兄貴は凄いんだよ。二段ベッドの下で寝ているんだけど、大の字なんだ。上に寝てたらきっと墜落すると思うよ」


「何でそんなこと此処で言うんだ」
秀樹君はプイッと横を向いた。