私は珠希。
この家に住み着く幽霊。
それとも背後霊?
まあ、そんなトコかな?


だから誰の目にも見えないの。
それがちょっぴり不満。

だって本当はね、ダーリンに愛してもらいたくて此方の世界に居残ることにしたんだもの。

養女の美紀に憑依したと言う形をとってね。

だって血の繋がりのない二人なら、何も問題ないでしょう。


何て嘘。
私が死んだ時、生死の境をさ迷い続けていたダーリンを助けたくて……
本当にそれだけだったのよ最初のうちは。


無我夢中だったわ。
二人が出会ったあの頃のように、何もかもかなぐり捨てて……
私はただ、ダーリンを傍で見守りたかっただけだったの。

奔走したわ。
何も見えないままに……


私はダーリンを……
パパだけは残ってほしかったのよ。
そう……
子供達のためにね。


それは本音。
この期に及んで嘘は言えないけどね。




 でもダーリンったら、全然気付いてくれない。

あんなに愛し合った私が傍にいるのにね。



焦れったくてモヤモヤしている内に、気が付いたら五年の歳月が流れていたわ。


だからあの私の誕生日に賭けてみたくなったの。
私は私の力で美紀の髪をほどかせた。
ダーリンは私のストレートヘアが大好きなの。
だから気付くと思った訳よ。

もっとも美紀は私との思い出がある日にはツインテールを解いていたけどね。




 それと、あの唐揚げ。
本当は私、鶏が苦手だったの。


その訳わね……
育てていたカラーひよこが普通の鶏になってショックを受けたの。

私の子供の頃、縁日には良く青や赤やピンクなどのひよこ売られていたの。
でもすぐに大きくなって、飼えなくなったの。


でももっとショックを受けたのは、その鶏を譲り渡した人が食べてしまったこと。


あのひよこが大きくなったら、鶏肉として売られる鶏になるなんて私は本当に知らなかったのよ。


それ以来私は、鶏が苦手になってしまったのよ。


美紀に唐揚げの作り方を伝授した時は必死に頑張ってみたのよ。

美紀は今でも私の教えた通りに、いえそれ以上の味に仕上げるの。


それと、あのバレンタインデーのトリュフチョコもね。

美紀ったらどんどん腕を上げて……
あの日、思わず泣いてしまったわ。
こんな優しい子供を私達の元に遣わせてくれた運命に感謝しながら……