秀樹は豪速球を売り物にしていた。
勿論捕球は直樹の担当だった。
『基本はキャッチボールと遠投』
そう新コーチに言われた。
(――その位解ってる)
秀樹は思う。
でも……
早く変化球を覚えたくて仕方ない。
昨日イヤイヤ、言われた通りキャッチボールをした。
『ストレートもまともに投げられない奴に、変化球が投げられる訳がない!』
投げやりな秀樹の態度を見たコーチに、そう指摘されてしまったのだ。
(――もうー!!
解ってる! 解ってる! 解ってるよ!!)
秀樹はヤケになっていた。
それともう一つ、イライラさせる原因があった。
生徒会の集まりで直樹が練習に遅れたのだ。
実は生徒会長の立候補は秀樹が無理矢理直樹に押し付けたものだった。
『野球部のために一肌脱げ』
そう言って……
今日の議案は勿論授業中の携帯禁止。
やはり、学校への持ち込み禁止は無理があった。
女子の防犯対策には必要不可欠だったからだ。
でもそんなことはどうでも良かった。
投げたいのに女房役の秀樹がいない。
秀樹はそれに腹を立てていたのだった。
だからついムキになって、やっと現れた直樹に向かってカーブを投げつけていたのだった。
でもそれはすっぽ抜けた。
慌てて直樹がボールを拾った。
「兄貴どうした?」
直樹が心配して、マウンドに駆け付けた。
「いや、何でもない……」
そう、言おうとした。
「もしかして、カーブだった?」
でも、直樹の指摘に言葉を失った。
「カーブは投げ方を誤ると肘や肩に大きな負担がかかるって言われたろう?」
「うん。俺の場合、手首をひねって親指が上に来るから危険なんだって」
「――ったく、しょうがねぇな。解ってて遣るから始末悪いよ」
直樹の言葉に秀樹はグーの音も出なかった。
「コーチが言っていたよ。外に向かって曲がるボールだから、その方向に手首をひねってしまうって。ストレートと同じでいいのにって」
「えっストレートと……」
「だから、まずはストレートなんだって」
「基本か?」
秀樹の問い掛けに直樹は頷いた。
勿論捕球は直樹の担当だった。
『基本はキャッチボールと遠投』
そう新コーチに言われた。
(――その位解ってる)
秀樹は思う。
でも……
早く変化球を覚えたくて仕方ない。
昨日イヤイヤ、言われた通りキャッチボールをした。
『ストレートもまともに投げられない奴に、変化球が投げられる訳がない!』
投げやりな秀樹の態度を見たコーチに、そう指摘されてしまったのだ。
(――もうー!!
解ってる! 解ってる! 解ってるよ!!)
秀樹はヤケになっていた。
それともう一つ、イライラさせる原因があった。
生徒会の集まりで直樹が練習に遅れたのだ。
実は生徒会長の立候補は秀樹が無理矢理直樹に押し付けたものだった。
『野球部のために一肌脱げ』
そう言って……
今日の議案は勿論授業中の携帯禁止。
やはり、学校への持ち込み禁止は無理があった。
女子の防犯対策には必要不可欠だったからだ。
でもそんなことはどうでも良かった。
投げたいのに女房役の秀樹がいない。
秀樹はそれに腹を立てていたのだった。
だからついムキになって、やっと現れた直樹に向かってカーブを投げつけていたのだった。
でもそれはすっぽ抜けた。
慌てて直樹がボールを拾った。
「兄貴どうした?」
直樹が心配して、マウンドに駆け付けた。
「いや、何でもない……」
そう、言おうとした。
「もしかして、カーブだった?」
でも、直樹の指摘に言葉を失った。
「カーブは投げ方を誤ると肘や肩に大きな負担がかかるって言われたろう?」
「うん。俺の場合、手首をひねって親指が上に来るから危険なんだって」
「――ったく、しょうがねぇな。解ってて遣るから始末悪いよ」
直樹の言葉に秀樹はグーの音も出なかった。
「コーチが言っていたよ。外に向かって曲がるボールだから、その方向に手首をひねってしまうって。ストレートと同じでいいのにって」
「えっストレートと……」
「だから、まずはストレートなんだって」
「基本か?」
秀樹の問い掛けに直樹は頷いた。


