この三人のタキシードには訳があった。
卒業式の後……
それぞれの思いを告白するために、準備していた物だった。

そう……
これがある事情だった。

三人からの正式なプロポーズになるはずだったのだ。


(――俺達の中から決めて貰おう。

――誰が選ばれても恨みっこなし)

そんな思いが交錯する。


でも……
ウエディングドレス姿の美紀を見た時、三人は固まった。


その幸せ溢れた表情は、正樹への愛を貫いた珠希そのものだったから。


(――ママみたいだ……)

秀樹は思う。


(――ママ……此処にいたの?)

直樹は思う。


それでも行く。


「ちょっと待った!」


「その結婚待った!」


三人は祖父にエスコートされて、正樹の元へ向かおうとしている美紀の足元へもう一度駆けつけた。




 「美紀のじっちゃん、そりゃないよ」
まず口をついて出たのは祖父への愚痴だった。


「俺達との約束は?」
大が怒りを露にした。


大は美紀と一緒に暮らせると思って大阪の大学に入学する手続きをしていたのだった。


「もう遅いか? いや、まだだ。是が非でもこの結婚を阻止してやる。ようし、ラストバトルだー!!」

大が号令する。

半分諦めていた秀樹と直樹の表情が見るからに変わっていく。