高校卒業を間近に控え、美紀は自分の身体の変化に気付いた。
それは運動不足から来る筋肉の衰えだった。


スポーツ系の短大に進学するのにこれはヤバいと感じた美紀は、何処かに適当な運動が出来る場所がないか考えた。


思い付いたのは二ヶ所だった。

一つは自宅近くにある体育館の二階。

珠希と正樹が足繁く通った無料のスポーツジムだ。

後ーつは、これ又無料の軟式テニス場だった。


(――そう言えば、最近行ってなかったな)
美紀は中学時代に良くこのソフトテニスコートに沙耶と通ったのだ。


珠希が亡くなってから本格的な練習を開始した美紀は、沙耶から手解きを受けていた。

沙耶も珠希同様地元での有名選手で、中学時代から軟式テニス部に所属して頑張っていたのだった。




 (――久しぶりに行ってみるかな、叔母さんを誘って)

自分を鍛えるために、それだけのことで沙耶を誘う。

随分虫のいい話だと自分でも思う。

それでも、美紀は沙耶と二人で行きたくてしょうがなくなっていた。




 美紀は意を決して、次の日曜日に無料のソフトテニスの練習場へ沙耶を誘う電話を掛けた。

沙耶は二つ返事で承諾した。


本当は美紀の手助けをしたいと思っていた沙耶だったのだが、まだ引っ掛かる部分もあったのだ。


それはやはり、美紀が正樹を愛している事実を容認したくはなかったのだった。


正樹は、沙耶の姉・珠希の夫なのだ。

いくら珠希が美紀に憑依していると解っていても、納得出来てはいかなったのだ。