その炎は自分が産まれて来た時よりあった。

いや、産まれる前に……

結城智恵が、長尾正樹と出会ったあの日より持ち続けていたのかも知れない。


もう一人の母のせいに又しようとしている。
そう感じながら……
でもそれが正解なのかもしれないと美紀は思った。


結城智恵の正樹を思う心が自分の遺伝子の一部となって刻み込まれた。

そしてそれに新たに、珠希が加わったのだ。

珠希の死が、美紀に新たな愛を植え付けたのだ。

それ故に、美紀は更に激しくその身を焦がしたのだった。


沙耶から語られた真実。

それを自分なりに解釈して、都合の良い方にもっていく。

美紀はそうも思っていたのだ。

だから尚更辛いのだ。




 ママの夢が自分の夢となった時、パパが喜んでくれると信じてた。

だから決意したのだ。

ママと同じ短大に通うことを。

でもその夢は、美紀にとってあまりにも遠い存在だったのだ。


珠希の通ったその学校は、長尾家から一番近い短大だった。
だから珠希は正樹と離れないで済む其処を選んだのだ。


その短大は専門学校同等に授業料が高い。

だから珠希はその資金を捻出するために頑張ったのだった。

そう……
それが美紀の悩みのタネだった。

美紀も珠希同様に、その資金作りに奔走しなくてはならなかったのだ。


節約に節約を重ね、高校生らしからぬ料理の腕で家計を支えてきた。


それは珠希の直伝。
珠希もそのようにして三人の子供達を成長させてきたのだった。


正樹は珠希の志を受けて、子供達の進路を妨げないようにしたのだ。


だから珠希の生命保険料は高校の学費にほとんど消えていたのだ。


スポーツ校で力を発揮するためには、遠征費用などがかかる。

それらは、正樹のセコンドの仕事の報酬だけでは賄いきれなかったのだ。