「ていうか想像で怖がる前に、恭平くん本人に聞いてみなよ。」
「…うーん…、勇気が、ない。」
「ふうん」
ちょ!紫乃さん!案外グサッときた!さして興味のなさそうな返事するのやめて!
紫乃に抉られた胸を押さえながら、靴を履き替えて、廊下を進む。
「ああああ!教室が近い近いよおお!!」
「あのね、舞香、傷つく覚悟も何もなくて恋なんてできるはずがないのよ。」
あたしの横を歩いてた紫乃が振り返って、真剣な顔であたしと目を合わせる。
傷つく覚悟…?
「怖いからって逃げてたら何にもなんないよ?お互いに向き合って、気持ちを伝えて前に進まなきゃ。」
「うん、だよね…」
「まあ鈍感には恭平くんの答えなんてわかんないわよね、あ、そういえば復帰おめでとう」
………紫乃様あああああああ!?今結構いいこと言う!!と思って感動してたんだけど!?
また鈍感って言ったよね!若干バカにしたよね!しかも復帰おめでとうって今ごろおおおお!?
感心して、反省してたあたしの気持ち返して!!!
ブツブツ言いながら紫乃と一緒に教室のドアを開ける。
「おはよー!舞香大丈夫?久しぶりー!」
「おはよ、元気元気!!」
とりあえずドア付近にいたクラスメイトに挨拶して、教室の後ろを通って自分の席に向かう…
「舞香、待て。」
…途中に居たのは、あたくしの幼なじみ様!
ですよね、まあ普通にこうなりますよね会いますよね知ってた。
「な、な、なんでしょう!!?」
明らか噛みまくってるー!!!ていうか目合わせられない!
てか普通に話せないっていうか普通ってなんだっけ!!?
「昨日のことなんだけど…」
恭平の声を聞いた瞬間、昨日の映像が頭の中を流れてぼっと顔に熱が集まるのがわかった。
「お前さ…「あー!!!あたし数学の宿題やるの忘れてた!今日当てられそうな予感するからまた後で!!!」
恭平の話を遮って、逃げる。
いや紫乃さんごめんなさい!!!
覚悟とかこれっぽっちも出来てませんでした!!!
いや、もう本当超スピードで、自分の席に吹っ飛んだよね。飛んだって表現の方が正しい気がするもんね。恭平の顔見れなかったしね。
数学の宿題とか解けるわけないのに、とりあえず教科書広げてみた。
…ぜんっぜんわかんねえええ!!
と思いつつ、恭平が諦めたようにため息をついて戻るのを見て、ふうっと息を吐く。
……あたし、HPが残ったまま今日を終えられる気がしない…。


