「お前さ、何俺のこと置いてってんの?」
「いや、え?ていうかまず離してもらっていいですか?」
「無理、離したくない、つーかお前離したら逃げるだろ。」
ええ、全力で。世界記録出すんじゃないかな?ってレベルで走りますけど何か。
だってね、さっきから心臓がうるさいの!ドキドキしまくってるの!!
顔に熱が集まりすぎて、今絶対顔真っ赤なの!
しかも忘れてたけどここ!下!駄!箱!
「に、逃げないから離してください。」
「無理、却下。」
誰かあたしに拒否権をください!!!
みなさんあたしの人権を無視しすぎです!!
「ほら、帰るぞ。」
「いやいやいやいやこの手は。」
やっと解放されたと思ったらいきなりあたしの右手を繋いでくる。
「…逃げないように。」
そっぽ向く恭平に、また熱を増した顔を見られないよう俯く。
……認めたくない。認められない。
でもやっとみんなが鈍いって言ってた意味がわかる気がするんだ。
異様に最近モヤモヤしていたのも、今、意識が集まりまくって何よりも熱くなっている右手の意味も。
やっと。
あたし、…。
あたし、恭平が好きだ。


