「…恭平!あたし、帰るね!!」
これ以上ここにいても頭の中をぐるぐるぐるぐるぐっるマイナス思考しか駆け巡らないな、と感じたあたしは、
とりあえず自分の席から立ち上がって前にいる恭平に大声でそう言う。
「は、舞香!?ちょ、待て!」
焦ったような恭平の言葉は無視して、カバンを持って逃げるみたいに走って教室を出た。
こういうのは逃げるが勝ちって言うじゃん!?
いや、何かと勝負してるわけではないんだけどね!HAHA!
廊下を全速力で走ってあっという間に下駄箱に辿り着く。
「…つ、かれたっ…」
部活にも入ってないんだから教室から全力疾走なんてさすがに疲れた!!
小さく肩で息をしながら上履きからローファーに履き替える。
…、恭平、まだ華ちゃんと話してるのかな。
「って、もう意味わかんないことで悩むのやめた!」
1人で言い聞かせるように言う。
わけわかんないのにモヤモヤしててもなんかバカらしいものね!
やめよう!そうだそうだ!!
ふん!と意気込んで足を一歩踏み出した瞬間、ぐいっと後ろから腕を引かれて思わず転びそうになる。
と、その瞬間、ふわっと馴染みのある匂いに包まれて、その人の胸に飛び込むような体勢になってしまう。
この匂いを間違うはずがない!
「きょ、恭平!?いきなり何!?転びかけたんだけど!?」
恭平に後ろから抱きしめられている状態で、うまく振り向けないため、前を向いたまま叫ぶと、「うるせえ」って言われる。
いや、うるせえってなんですか…。
ていうか!近いから!近い!!
ボソッと恭平が呟くとあたしのちょうど耳元に息が当たるの!わざとか!そうかわざとか!!


