「華、次のCDも買うつもりなんですけど、3パターンあるじゃないですか!?何買うか迷いません!?」
「そうだよな、あ、じゃあ華と俺で何かお互いに貸し合う?」
「いいんですかっ!?TraceのCD高いのでそれできたら幸せです!」
楽しんでる2人の会話が聞こえてきて、違和感を感じる。
「ねぇ、紫乃、今、恭平って華ちゃんのこと下の名前で呼び捨てにしてたよね?」
あたしの質問に、紫乃が頷く。
…聞き間違いじゃなかったんだ…。
「舞香大丈夫?昇降口まで私と一緒に帰る?」
「ううん、多分すぐ恭平来るだろうし、待ってる!!」
紫乃の提案には静かに首を振って、笑顔を見せる。
心配そうな顔をしてたけど、あたしが「また明日。」って手を振ると、小さく手を振り返して帰って行った。
家が真反対の方角だから一緒に帰れないって辛いよね!
着々と人が少なくなっていく教室で、机に肘をついて窓を見る。
雨、止みそうにないな…。
『華』
何て考えてみても、思い浮かぶのはさっきの恭平の言葉。
高校に入ってから、恭平が下の名前を呼び捨てで呼ぶなんてあたしだけだった。
…そっか、町田くんの言う通り、華ちゃんも特別になったんだね。
「…ふふ、…いいじゃん、」
別にあたしだけが特別であってほしかったわけじゃないし、それでもいいじゃんと思うのに、
── 何でこんなに悲しくなるんだろう。


