「Traceのボーカルの歌い方が好きなんですっ!あの伸ばし方とか最高でっ!!」
「ああ、わかる、声とかもかっこいいよな。」
「そうなんですよ〜っ!ここまで話が合う人初めてですっ!高まりますっ!!」
ああ、また、原因不明のモヤモヤが増えて胸が苦しくなった。
ホームルームが終わって、雨で屋外の部活がない日は大抵恭平と帰ってるんだけど、未だに2人の世界で盛り上がってるから、どうしようか、と悩みだす。
え、あたしこれ待ってなきゃいけないのかな?どうなのかな?
「舞香、いいの?」
「いいのって何ですか紫乃さん、あたしが帰っても恭平は1人で帰れると思いますが!」
あたしの前の子の席に横向きに座って、尋ねてくる紫乃の言葉に答えながら机に伏せる。
もう、あたしは寝たいんだ…、考えるのとか向いてないし……。
あたしの頭では重量オーバーなんです!
華ちゃんの事だっていい子だし可愛いし好きだし…。
ムカムカするようなことは何もないはずなんだけど!!
「だから言ったのに…、失う時に気づいても遅すぎるって。まあまだ全然間に合う、かな、一応。」
紫乃の呆れた言葉はとりあえずパンク寸前の頭で理解するのはちょっと難しいので右から左でいいかな?
「聞き流そうとすんな?」
伏せたままなのに前から感じる黒いオーラに飛び起きる。
ひいいいい!スルーしようとしてすみませんでした!!!
「…まあ、もうすぐ、気づきそうだからいいけど。」
「え?今何て言った?」
「何でもない。私帰るけど、舞香帰らないの?」
小さくもごもごって言った紫乃の言葉が聞き取れなくてきき返すけどはぐらかされた。
何て言ったのか気になるじゃん!!
と、思いつつも渋々事情を話す。
「いや、恭平待たなきゃいけないからさ。」
「ああ…、華ちゃんか。」
あたしが恭平達の方向へ向けていた視線を紫乃がたどって、納得したような声を出す。


