好きなもんは好き。







「舞香は鈍感って言うより、いや、確かに鈍感なんだけど、いや人一倍っていうか5倍くらいは鈍感なんだけど。」







「待ってよ、始まる前から貶しだすのやめてよ、ガラスのハートがァ…」








「ガラスに見せかけたコンクリートのハートがどうかしたの?」








いやいや、コンクリートとか強すぎるだろ!!!!








さすがにそこまでメンタル強くないわ!!!!










「まあ、それは置いといて。」







「置いとけないけど、まあ、見ないフリするね、とりあえず見ないフリしとくね。」






「……舞香の場合、ずっとそばに大切な人がいすぎて、何も気付かないのよ。」






「…は?」







いや、いきなり理解不能なゾーンへは入られたんだけど、は?








「大切な人って気付かないほど案外すぐ近くにいるものよ、失う時に気付いても遅すぎるんだからね?」









紫乃が珍しく真剣な瞳で言うから冗談なんかじゃないっていうのは分かるんだけど…、









どうしても頭にクエッションマークが浮かぶのが止められない。









大切な人って誰……??










「わ、分かりやすく説明は…?」








「え、今ので分かんないの?はは、さすが舞香ね。理解力の無さのギネスでも取ってくれば?」








紫乃が微笑んでいるのに目が、目が笑ってないっ…!!








な、何で!!!?








「舞香、でもさっき言ったことは本当よ?いつまでもお互いがそばにいれる、だなんて限らないからね?」








「お互いがそばにいれる…?」








「舞香がいつだってどんな時だって、そばにいてほしい人って誰?」








「そ、れは…」







紫乃の急な質問に戸惑ってしまう。









どんな時だってそばにいてほしい、って突然言われても…。








「まあ、いいわ。これからが楽しみってことだけは分かったから。じゃあ、舞香、また明日ね?」









ちょうど昇降口についた途端、意味ありげに微笑んで手を振る紫乃に混乱しながらも手を振り返した。











…あたしが、そばにいてほしい人…、か。