好きなもんは好き。







「俺じゃダメなわけ?」




「恭平…?」






ジリジリと近寄ってくる恭平にそっと後ずさると狭い玄関だからすぐに壁に背中がぶつかる。





それと同時に恭平の左手があたしの顔の横に静かに置かれた。






ち、近いんですが…!!





これ俗にいう『ソフト壁ドン』ってやつですか!!?





あの少女漫画やらで有名なあの技ですか!!?






「舞香の勉強なら俺が見るから。」




「わ、わ、わかった!ワカリマシタ!オーケーデス!!」






至近距離すぎる状況に片言で返すしか術がない。





だってこいつ無駄に整った顔してるじゃん!!





あたし男に免疫ないじゃん!





結果心臓が飛び出そうなくらいドキドキしてるじゃん!






=助けて欲しい。





いや、これ切実に。








今が薄暗い玄関で良かったと思う。






だって熱が集まりすぎている頰は、






── 絶対真っ赤だと思うし。