好きなもんは好き。






「きょ、恭平!ちょっと待って!一ノ瀬くん置いてきたよ!?」




「どうせ帰るだろ。」





そうだけど…、礼儀ってものがあるでしょうが…!





電気が点いてなくて薄暗い玄関だけど、





至近距離に恭平がいるからとりあえずご機嫌斜めだということはわかる。






何故なのかは知らないが、ご立腹らしい。





「きょ、恭平くーん、どうしました?照ちゃんと喧嘩した?」




「…」




とりあえず聞いてみるも返答なし。無言の貫きありがとうございました!!!





これ俗にいう無視ってやつだよね?




結構やっちゃいけない部類に入ってる無視だよね?





そう思ってると、まだ掴まれていた腕を引かれて向かい合わせになる。





「お前さ、なんで優紀と勉強してんの?」




「…え?なんでって、え?いや、一ノ瀬くんが頭いいから…?」





あたしの疑問を華麗にスルーした恭平が聞いてきた質問に、少し困る。





え、なんでって、え?理由?何それ、あたしの理解力がなくてテストがやばいので教えてもらってましたって答えればいいの?え、そこまで言わせるの?鬼なの?何なの?





「…そうじゃなくて、なんで俺じゃないの?」



「…いや、だって、恭平あたしのこと理解力なくてやだって言ったし。」





あとなんか最近恭平ちょいちょい謎の行動するじゃん。って理由は言わないことにしました。




言える雰囲気じゃなかったので。なぜか。舞香ちゃんは空気の読める女だZE☆





なんてこの空気感でやってる時点で相当のKYですね、はい。






「…他の男に教えてもらってる方がずっとやだわ、バーカ。」




「…は?それってどういう…?」





ボソッと呟いた恭平の言葉は聞き取れるか聞き取れないかくらいのギリギリの小さい声だったけど、聞こえた。




ちょっと待って、恭平今なんて言った?





あたし理解力ないんだからちょっと待って意味がまだ把握できてない。時間が欲しい。





「舞香」




「ハイ!!」




私の願い虚しく、考える時間がないまま名前を呼ばれる。




ぎゃああ!!変な声出た!!辛い!!!