私はただただ男の子の背中を追いかけた。

私達の間に沈黙が流れた。

一生懸命私のために家を探してくれる男の子。

私は鼻の奥がツーッとなった。

こんなに人に優しくしてもらえたのは久しぶりで。

「祈!」

おばあちゃんの声が聞こえた。

「祈!迎えに来るの遅くなってごめんねぇ。」

懐かしいおばあちゃんの声。

「おばあちゃん…!」

男の子が私の方に振り返った。

「あれ、空がここまで連れてきてくれたんね。」

男の子は「うん!」って言ってまた満面の笑みで。

その笑顔は私より、おばあちゃんに向ける方がすごく似合ってる。

「あ!俺自己紹介まだだった!俺井上空!よろしゅうな!」

井上空 (inoue sora)

名前にはどんな意味が込められているんだろう。

時々入る福岡弁は気にしないでおこう。

「よろしく。」

「名前は?」

「佐倉祈」

「祈?かわええの~!」

え…?

可愛い?

私が?あり得ない。

いろんな人から捨てられた私が可愛い訳がない。

「ほれ、祈、聖家に帰るよ。」

優しいく落ち着くおばあちゃんの声。

おばあちゃんには心を開きたい。

でも私は誰も信じない。

悲しくない。
苦しくない。

そうやってこれから毎日私は自分に言い聞かせる。