あれは私が生まれる前の話。


「あーなーたー!」

「なんだ、なんだ。」

「私…あの…その……妊娠しました!」

「え!」

お父さんは飲んでいたコーヒをこぼした。

それほど嬉しかったのだろう。

私が生まれて来るまでは…。

「女の子か、男の子か、どっちだろな。」

静かだけど嬉しそうに言うお父さん。

「そうねぇ、どちらでしょうね。でもどっちにしたって私達の子。どっちだって私は幸せですわ。」

優しいお母さんの声。

「ゴホン!…」

「…?」

そうわざとのように咳をして黙り込んだお父さん。


そうだよね。
女の子じゃなくて男の子がお欲しかったんだよね。
私じゃなくてもっと愛せる男の子を…。


それから5ヶ月たった。

お母さんのお腹もかなり膨らんできたとき。

「貴方、今日病院に行ってきたの。」

「そうか、で、なんだって。」

「お腹の子は女の子だそうです…!」

「え…、女の子…?」

「はい…!」

嬉しそうに言うお母さんに対して、

お父さんは…

「バカもん!なんで女なんだ!せっかくできた子供なのに!損じゃないか!」

怒鳴った。

「な、なんでですか!なんで女の子じゃダメなんですか!?」

お母さんは必死にお父さんに問いかける。

「女は嫌いだ!とっとと流産しろぉ!」

「りゅ、流産!!??何言ってるんですか!流産なんて…!せっかくできた子供ですよ!そんな事親になる私達がしてはいけません!」

必死に流産を反対するお母さん。

「もう、知らん!」

そう言ってお父さんは家を出てった。