今日は鎮魂の日。

 第七都の土地のうちの約半分、一街と四街が炎に焼かれたのが、ちょうど半年前のこと。それを人々は、「赤い魔女の大火」と呼ぶ。

 現在のこの国は、絶対王制と言われるものに近い。第一都の中央、惠暁宮にて国を統べるのが大将軍だ。

 旧時代の皇居と呼ばれた場所を現在は靖国という。そこで様々な政が行われている。

 大将軍とその一族が住まう城が惠暁宮。そこには大将軍と、「大将軍のこどもたち」と呼ばれる、母親を異にした大将軍の直系の子孫たちがいた。大将軍の血筋をよりよいものとして残すために、特に優秀な人物を多く輩出する家系が選定され、その一族の女性が為した大将軍の子孫に、高い確率で、優れた頭脳と武芸の才能をあらわす者が生まれる。その中から第一都正規軍の赤軍、青軍の将軍が選定されていた。

 国は現在、七つの都に分けられ、それがそのまま厳然たる身分制度を表している。

 最も高い位の者が住まう第一都、そして最も低い階級の、ひととして扱われない、そんな身分の人々が住むのが第七都。

 第七都というところは、罪人が送り込まれる不毛の地で、中でも、政治犯と言われるような人々がここへ送られてくることが多い。要するに、この国の中央で権力を握る者にとって、都合が悪いとされる分子がここに集められているのだった。

 しかしここへ送られてくるような者は、大抵は自らの才覚にある程度の自信を持ち、それなりの安定した生活や身分を捨てても、中央政権に刃向かおうとした気概のある者たちだ。何らかの特技や、優れた頭脳を持つ、そんな類の人間も多かった。

 第七都に反政府勢力のレジスタンスが生まれ、それと第一都惠暁宮中央政権の間に戦が勃発したのが、十年ほど前のこと。

 正規の軍を持った第一都の勝利であっけなく幕を下ろすだろう、というのが大方の予想だったが、それを裏切り戦は長く続いていた。