どうして今、唐突に彼のことを思い出してしまったのか。

 なぜだか、その理由が七都にあるような気が聖羅にはした。

 彼女が来てから落ち着かない。確かに、英凛々子の娘、というだけで、心を揺さぶられるには十分な条件であるかもしれなかったが、それだけではないような気がしていた。

 あの妙にまっすぐな、ちいさな星をたくさんつめこんだような瞳で見られると、どれほど彼女に対して無感覚であろうとしてもそれができなくなってしまう。

 あのまだわずかに幼さの残る少女の表情に、一挙一動に、心が動いてしまいそれを止めることができない。七都に対し無心であることがひどく難しい。

 それがなぜなのかと、聖羅は幾度も自らに問うたが、その答えは見つからなかった。

 この半年間、それこそ自らの全力をつぎ込んだ、強い意志の力で、自らの意志と感覚のすべてを空に保つべく閉ざしていたのに。

 罪滅ぼしとして自らをその状態に置くことを決めたけれど、ほんとうのところ、それは自己満足だと聖羅は知っていた。罪は何を以てしても滅びたりはしない。永遠にそこに残るのみだ。ただ未来にも同じことを繰り返してはならないと、そのために自らの意志をこの世界に存在させてはならないのだと考えた。

 なのに凍らせた心を無遠慮に解かそうとする、あの子は一体何なのだろう。

 大体七都がこの場所にたどり着いたのは何の因果なのか。

 罪と罰の相関か。思わず聖羅はそう問いたくなる。

 けれど自分は罪罰のからくりなど信じてはいない。罪を犯したものに天より罰が下る、そのような考え方は、自らの運命を自分で握ることのできない弱い者が、無惨に翻弄される自分自身の現実を納得するための理由づけをしただけのことに過ぎないと、聖羅は思う。

 そのような宗教的観念を、聖羅は自分に属する意志を放棄する手段として厭うていた。

 けれどついそんな考えが浮かんでしまうのだ、七都のことを思うと。