レジスタンスの基地から離れ、あてもなくさまよううちに、いつの間にか七都は、凛々子が生前住んでいたという家の前にたどり着いていた。
玄関の扉を開こうとすると、鍵がかかっていた。けれど窓にまわって、雨戸に手をかけると、それは簡単に外れた。
ひらりと軽い身のこなしで開けた窓から入り込み、そして、内側から外した雨戸をぴっちりと填め直す。
家の中が隙間なく閉められ、光も入らず真っ暗になったのを見渡して、それから、七都は泣いた。声を限りに泣いた。泣いて泣いて、喚き散らした。
「おかあさんなんて嫌い、おかあさんなんて大嫌い!」
がらんとした部屋の端にたたまれていた布団に顔をうずめると、母のにおいが残っていた。
「うわああああああん」
涙があとからあとから出てきて止まらない。胸の奥に、重たい固まりのようなものが詰まって、つっかえて取れない。
おかあさんなんて。あたしのこと愛してなかった。
そう胸の中で繰り返しながら七都は、忘れることができないのだった。抱きしめてくれた腕の強さを。頭をなでてくれたてのひらの暖かさを。
それでも、第七都のために自分がないがしろにされたという思いも、ぬぐえない。
『おかあさんはね、世界でいちばん七都と優花のことがすき。だいすき』
『あたしが悪いことしても? いい子にならなくても?』
『七都がいい子だからすきなわけじゃないもの。どんなに悪いことをしたって、それでひとりぼっちになったって、おかあさんだけは七都の味方をしていいのよって、そう神様が決めてくれたのよ。だからきっと、七都もおかあさんを選んで、おかあさんのこどもになって生まれてきてくれたんだよね』
それは胸の裡によみがえる、まだ幼い日の記憶。
『でもね、おかあさんが悪いおかあさんになったら、七都はおかあさんのこと、嫌いになっていいんだよ?』
『ならないよ、あたしおかあさんのことだいすきだもん。おかあさんを嫌いになんてなるはずないもん!』
『うれしい、ありがとう七都』
母が笑ってほおずりをしてくれた。それは遠い、遠い日の話。
玄関の扉を開こうとすると、鍵がかかっていた。けれど窓にまわって、雨戸に手をかけると、それは簡単に外れた。
ひらりと軽い身のこなしで開けた窓から入り込み、そして、内側から外した雨戸をぴっちりと填め直す。
家の中が隙間なく閉められ、光も入らず真っ暗になったのを見渡して、それから、七都は泣いた。声を限りに泣いた。泣いて泣いて、喚き散らした。
「おかあさんなんて嫌い、おかあさんなんて大嫌い!」
がらんとした部屋の端にたたまれていた布団に顔をうずめると、母のにおいが残っていた。
「うわああああああん」
涙があとからあとから出てきて止まらない。胸の奥に、重たい固まりのようなものが詰まって、つっかえて取れない。
おかあさんなんて。あたしのこと愛してなかった。
そう胸の中で繰り返しながら七都は、忘れることができないのだった。抱きしめてくれた腕の強さを。頭をなでてくれたてのひらの暖かさを。
それでも、第七都のために自分がないがしろにされたという思いも、ぬぐえない。
『おかあさんはね、世界でいちばん七都と優花のことがすき。だいすき』
『あたしが悪いことしても? いい子にならなくても?』
『七都がいい子だからすきなわけじゃないもの。どんなに悪いことをしたって、それでひとりぼっちになったって、おかあさんだけは七都の味方をしていいのよって、そう神様が決めてくれたのよ。だからきっと、七都もおかあさんを選んで、おかあさんのこどもになって生まれてきてくれたんだよね』
それは胸の裡によみがえる、まだ幼い日の記憶。
『でもね、おかあさんが悪いおかあさんになったら、七都はおかあさんのこと、嫌いになっていいんだよ?』
『ならないよ、あたしおかあさんのことだいすきだもん。おかあさんを嫌いになんてなるはずないもん!』
『うれしい、ありがとう七都』
母が笑ってほおずりをしてくれた。それは遠い、遠い日の話。
