聖羅が扉の向こうの会話を聞こうと聞き耳を立てていると、ぽんと背後から肩を叩かれた。

「よう」

 聖羅が振り向くと、魚屋があのあかるい笑顔で立っていた。

「七都か?」

「……ええ」

「悪いな、七都さっきちょっといろいろあってさ、飛び出してった。今ここにはいないんだ」

「いろいろって?」

 聖羅が訊ねると、尚釉が奥歯に物が挟まったような答え方をした。

「ああ、まあなんていうか、あいつの母ちゃんのことでさ、いろいろとな。赤将軍が魔女じゃなくて、若い男だった。そのことでいろいろ言った馬鹿がいてさ」

「そう……。新しい赤将軍はどんな男だったの?」

「ああ、まだ若くて、多分七都と同じくらいの年じゃないか。短い茶色い髪をして、目の色も薄かったな……ってあれ、シスターも戦に興味があるものなのか、へえ」

「……そういうわけでもないけれど」

 聖羅はそう答えながら、何故だか彼に対しては、不思議と素の自分がでてしまうような気がして、不思議に思った。

「まあそんなわけで、七都は群青が追いかけていったから、多分教会まで送っていくだろうと思う。だから心配するな。シスターもそろそろ遅くなるから帰った方がいいぜ」

「ええ、そうするわ」

「送ろうか? ああ、下心はないよ。俺はこれでも妻がある身だから」

「そう」

 何事かを考えている様子で聖羅が生返事を返しながら、修道服のヴェールから零れた髪を耳にかけた。