七都は溜息をついた。

 自分とて、凛々子のすべてを否定したいわけではないのだ。けれど何度も、第七都のためという名目で捨て置かれて、挙げ句の果てに自分たちを置いて死んでしまった。

 その過程を、結果を見続けて、どうしたら皆の言うように、自分たちが誰よりも愛されていたと信じることができるだろう。

 心のどこかでは、ほんとうはそうではなくて、自分たちのことを何よりも大切に考えていたと、そう思いたい気持ちはあるのだけれど。

 思い出すのは母の笑顔。だいすきよ、と。七都のことがおかあさんは大好きなの、そういって自分を抱き上げた腕。

 そこに嘘があるだなんて考えたこともなかったのに、信じることができないなんて。

 そう考えると、七都はかなしくて仕方がないのだった。

 第七都のために生命を捨てた凛々子が、まるで聖母のように語られる。それは既に第七都の共通財産の如く。

 それなら「あたしのおかあさん」は何処にいるのだろう、何処にいたのだろう。

 玻璃のない窓枠に腕をついて、七都は外を眺めているふりをした。風が吹くと目尻がわずかにつめたい。

 そのとき、ドアがばたんと音をあけて開き、まだ年若いレジスタンスの青年が駆け込んできた。

「今聞いたんだが、現在の赤将軍はまだごく年若い男だって話だ、魔女は大火の後、行方が知れないらしい。で、噂では、実は凛々子と魔女は相打ちだったんじゃないかって話がでてる」

「……え?」

 あまりに唐突な話の流れに、七都がぽかんとして振り向いた。青年の言っていることが、一瞬よく理解できなかったのだ。

「それはほんとうか? そうだったのか、七都」

 ざわりと周囲が沸いた。

「凛々子はただ魔女の計略に填められて殺されたわけじゃなかったのか、魔女も道連れにしていたのか?」

「七都は凛々子が死んだその場所にいたんだろう、その瞬間を見たんだろう、ほんとうはどうだったんだ」

 レジスタンスの人間は、凛々子のことになると目の色が変わる。

「やめろ!」

 群青が彼等と七都の間に割って入り、珍しく強い語調で制止した。

「なんで。おかあさんが……?」

 一瞬の思考停止。

「七都」

「魔女は……」