七都が赤将軍の姿を、恐れのない瞳でまっすぐに見上げた。目線が合い。馬上にあった男は瞬きをひとつした。

 赤将軍の剣が七都の頭上に落ちると、誰もがそう思ったが、そうはならなかった。

 持っている剣を抜くことも、その場から逃げ出すこともせずに、ただ進路を塞ぎ立ちはだかる七都の眼前に、ぴたりと振り下ろした剣を突きつけて。男が七都を見下ろしていた。

「……おまえのような小娘が、何故戦場にいる?」

 射抜くような鋭い眼光。その奥に見えるのはゆるぎない、自信と自負。第一都赤将軍。まさに、自分こそが王であるのだと。そのことを、色の薄い、見ようによっては金色にも見える瞳が、ただ当然のこととして語っていた。

 陽に透けると金色に輝く髪が、若い獅子のようだった。

「あたしはただ見に来ただけ。あたしからたくさんのものを奪って、そしてこれからもきっと奪い続けていく、戦とはどんなものなのか」

 少しでも動けばその切っ先が前髪に触れる、それほどの近くに刃を翳されて、それでも未だ七都の心に恐怖という感情は訪れず。平然と赤将軍にそうと言い放つ、自分の声がどこか別の場所から聞こえてくるような気がしていた。感覚が麻痺して、自分は馬鹿になっているのではないかとも思った。

 馬上の男は、面白そうに笑った。

「……去れ。戦場とは、おまえのようなこどもの、いるべき場所ではない」

 そう言うその男の、年齢は七都とさほど変わるとは思えなかった。

 けれど彼の放つ、強烈な存在感が。誰もが敵いようのない、目も眩むほどのかがやきが、この場を支配しているのが誰なのだかを、明確に物語っていた。

「去れ」

 もう一度七都にそう告げて、赤将軍は、手綱を引いた。

 馬首を変えて疾風のように去りゆく、赤将軍の姿から、どうしてだか七都は目をそらすことができなかった。

 目の前に剣を振り下ろされても恐れを感じなかった、その胸の、鼓動が今はどうしてだか鳴りやまない。それが何故なのかはわからなかった。

 赤将軍の姿が遠ざかり、その場を包んでいた、張りつめた空気が破れた。

 不意に力が抜けて、七都はその場に座り込んだ。