真夜中だというのにここはあかるく、酒場からは音楽が洩れ、閉店して雨戸をしめた店の前には、化粧も濃く、美しく着飾った女たちが立っていた。

 雑然としたその中に、際立って清楚な、白い和服の女がいた。髪は肩のわずかに上できれいに切りそろえられていた。

「静」

 群青はその和服の女を呼び止めた。彼女は静かに振り向くと、その涼やかな表情に、かすかな笑みを浮かべた。

「とても、久しぶりね」

「……ああ」

 群青もはにかむように笑った。

「今日はどこへ?」

「馴染みのお客さんに呼ばれて。これから行くところ」

「ああ、仕事──」

 思いだしたように言う群青に、静が苦笑した。

「この時間に私が、ここで他に何をしていると思うの」

「いや……」

 群青が金の髪を揺らして、かすかに目をふせた。

「ごめん、馬鹿みたいだ。当たり前のことを聞いたね」

 彼女は花街の娼婦だ。彼女の母が、遺伝子汚染地域に指定された、西の都の出身だった。それゆえに母子共に第七都で生きてゆくことを余儀なくされ、娼婦となった母の姿を見て育った彼女もまた当然のように同じ道をたどったのだった。

 第七都にはそういった職業に就く人々も多く、レジスタンスに関わる人間の中にも、花街で働いている者がいた。たとえば凛々子の親友であった由可がそうだ。

「今日、基地で由可に会ったよ」

「さっき聞いたわ。凛々子の娘を群青が連れてきたって」

 今はもう由可も若くなく、静のいる娼館の女将をしているが、かつて凛々子と出会ったときは、まだ現役の娼婦だったらしい。