群青は相変わらずの穏やかな顔で続ける。七都はそれを見上げて、少し不満そうに口をとがらせた。

「第七都に生まれても、そんな思いをしないですむようにと、凛々子やレジスタンスの人たちは、第一都と戦いを続けているんじゃないのかな」

「……それはそうかもしれないけれど」

「だからきっと、そんな人たちを愛して、凛々子は七都に七都という名前をくれたんだと、僕は思うよ」

「……」

 七都はうつむいて、つま先で地面を蹴った。その様子を見た群青が微笑んで、そっと、七都の肩に触れた。

「凛々子は多分、七都たちを守りたかったんだよ」

「……そんなことないわ」

 不機嫌な顔をして、七都は答えた。

 群青は七都の先に立って、三街の戦闘地域に近い住宅地へと足を進めた。もともと質素な造りの家が多い第七都だけれど、この辺りは、さらにそのなかでも無骨な造りの建物が多い。

 この辺りが第七都のレジスタンス、その本拠地だ。

「来るのははじめて?」

 物珍しそうにきょろきょろと辺りを眺める七都を見て、群青が言った。

「うん……あたしは来たことがないから。おかあさんはよく来てただろうけど、ここにあたしたちを連れてきてくれたことはなかったし」

「そうか。……あ、あの家」

 群青が指し示したのは、立ち並ぶ大きな瓦礫のような建物の中では、比較的人が住んでいる気配のありそうな、普通の形をした家だった。

「凛々子が三街にいるときは、その家にいたよ」

 凛々子、というそのひとことに、七都の背がかすかに反応した。

「……今は誰もいないの?」

「今はね。でも誰かがいつもきれいにしてる。凛々子の使っていた家だから」

 白い壁と赤茶けた屋根の色が、かつて三人で暮らしていた家に、少し似ているような気がした。

「見ていく?」

「……いい」

 七都は気のない返事をした。