レジスタンスの人々と関わりを持ったとして、七都がそれからどうするのか、聖羅も興味があるところだった。なぜだかどうにも、七都のことが気に掛かってしかたがない。

 聖羅は掃除を終え、部屋に戻りかけた。

 そのとき、ドアが二度、ノックされた。

「魚屋でーす」

 玄関横の倉庫に掃除道具をしまい、聖羅は扉を開けた。最近よく見かける、魚屋の青年だった。

「はい、大シスターに昨日頼まれた分。えっと……」

 魚を数えて、彼は袋を聖羅に差しだした。聖羅はいつものように微笑んで、それを受け取った。

「ありがとうございます。ご苦労様でした」

 受け取りながら、聖羅は何気なく彼の顔を観察した。普段見慣れていないタイプの人間だ。そういえば、陽に灼けた肌をして、言葉の端に少し、聞き慣れない訛りがある。あかるくかがやいた瞳をしていた。夏の風のような。それが印象的だった。

「シスターはいつもそんな格好で、暑くないのか?」

「え?」

 唐突に話しかけられて、聖羅は顔に貼り付けた微笑みは崩さぬままに彼を見上げた。

「……と思ったけど、あんまり暑そうな顔はしてないんだな」

 潮に焼けたような褐色の髪をくしゃっと掻きあげて、彼が笑った。

「なんかシスター見てると、この暑いのに涼しい気がしてくる、不思議だな」

 じっと聖羅を眺めてそう独り言のように言ったあと、しまったというように軽く舌打ちをして、魚の入ったかごを背負いなおした。

「って今日はまだまだ配達あるんだった、こんなところで油売ってると魚が腐っちまう。それじゃあまたよろしく!」

 陽気に手をあげて、魚屋は出ていった。あわただしく彼が閉めていった扉は、閉まり損ない少し開いていた。聖羅は少し笑うと、きちんとはまるまでノブを引き、魚の入った袋を抱え、台所へ入っていった。