聖羅はひとつ、ためいきをついて辺りを見渡した。

 食事を終え、後かたづけも済ませると、もう何もすることがなくなってしまう。教会は朝が早いので、百合子と大シスターは寝るための準備を始めていた。

 聖羅はあまり睡眠を取らない。なぜだか、子供の頃からそうだった。せいぜい四時間も眠れば充分だ。少し前までは、夜に一人きり起きているのもそれほど苦ではなかった。けれど今は部屋に、七都がいる。

 台所の明かりは、大シスターが眠るときには消されてしまうので、部屋から出ているわけにもいかない。気が進まないながらも、聖羅は自室へ戻った。

 部屋に戻ると、七都が振り返って自分を見たが、そのまま何も言わずにいたら興味を失ったようにまた、窓の方を向いてしまった。

 同じ部屋にいても、七都とは大して言葉を交わしたりはしない。七都は座ったままぼうっとしていたし、聖羅は七都に近寄ろうとしなかったので。

 けれど聖羅は実は、その七都を、遠くから無言でずっと観察していた。

 子どもから女へ変化する、ちょうどその狭間にある不安定な年頃の少女。長い黒髪が、時折邪魔そうに顔にかかっていたが、それを気にする様子はなかった。

 瞼が閉じそうになるたびに、七都が目をこする。夜更かしをする幼子のように。どうにも眠そうな七都を見て、寝ればいいのに、と聖羅は思う。けれど七都は床に座ったまま、ベッドに上がろうとはしない。今何時頃だろうと窓から空を見上げれば、月がいいかげん真夜中の入り口をさししめすあたりに昇っていた。明日も早い。睡眠の短い自分でも、そろそろ眠りのための準備を始めてもいい時間だ。

 聖羅はぼんやり座ったままの七都にはかまわず、勝手に、夜着に着替えて眠る準備を始めた。