七都は足を投げ出して、両手を床について体を支えるようにして、まだ窓の外を眺めていた。
夕暮れ。
空が赤く染まってとてもきれいだ。
家族がいた頃の日没の景色を思い出して、七都はまた涙ぐんだ。
こうして朝から夜眠るまで、気まぐれに一日中、ぼんやりしたり泣いてみたりばかりしている。こんなふうにしていると、過ぎてゆく時間の感覚も遠のく。ここに来てから何日経ったのかを、七都はすぐに思い出すことができなくなっていた。
七都は体を後ろに反らして、力を抜いて目を閉じた。肩で頭の重さを感じる。そうしてまたとりとめもなくいろんなことを思い出しながら、何気なく目を開けると、逆さまになった視界の端に、ドアのところで自分を見ている聖羅が目に入った。
七都は身を起こして振り向こうと、だらんと肩に乗っかった頭を持ち上げた。急激に動いたせいか頭がくらくらした。目を回したような感覚を味わいながら、体をひねり振り向いた。
聖羅はじっと自分のことを見ていた。何かを言いたそうな目をしていたけれど、聖羅は口を開かなかった。感情の読みとれない視線がまっすぐに自分を見下ろしていて、七都はかすかに首を傾げてまばたきをした。
すると聖羅はふいと横を向き、何事もなかったかのように去ってゆく。
こういうことは初めてではなかった。同室で寝起きしてもう数日経つけれど、まともな会話を交わしたことはない。眠る前にそこにいれば、おやすみなさいと挨拶くらいはするというその程度で、大シスターや百合子のように、何かと声をかけてくれたりすることもない。けれど視線を感じて振り向くと、聖羅に見られていることがあるのだった。
なんだろう、と、七都は一瞬考えたが、それでもすぐに忘れてしまう。七都にとってそれはたいしたことではなかった。
ずるずると七都は床に手を滑らせ、ぱたん、と横になった。
日が陰りはじめ、辺りが暗くなってきた。窓から差し込む光も徐々に弱くなり、そしてすこし床の色が濃くなってきた、と思ったら真っ暗になるのはすぐだった。
夕暮れ。
空が赤く染まってとてもきれいだ。
家族がいた頃の日没の景色を思い出して、七都はまた涙ぐんだ。
こうして朝から夜眠るまで、気まぐれに一日中、ぼんやりしたり泣いてみたりばかりしている。こんなふうにしていると、過ぎてゆく時間の感覚も遠のく。ここに来てから何日経ったのかを、七都はすぐに思い出すことができなくなっていた。
七都は体を後ろに反らして、力を抜いて目を閉じた。肩で頭の重さを感じる。そうしてまたとりとめもなくいろんなことを思い出しながら、何気なく目を開けると、逆さまになった視界の端に、ドアのところで自分を見ている聖羅が目に入った。
七都は身を起こして振り向こうと、だらんと肩に乗っかった頭を持ち上げた。急激に動いたせいか頭がくらくらした。目を回したような感覚を味わいながら、体をひねり振り向いた。
聖羅はじっと自分のことを見ていた。何かを言いたそうな目をしていたけれど、聖羅は口を開かなかった。感情の読みとれない視線がまっすぐに自分を見下ろしていて、七都はかすかに首を傾げてまばたきをした。
すると聖羅はふいと横を向き、何事もなかったかのように去ってゆく。
こういうことは初めてではなかった。同室で寝起きしてもう数日経つけれど、まともな会話を交わしたことはない。眠る前にそこにいれば、おやすみなさいと挨拶くらいはするというその程度で、大シスターや百合子のように、何かと声をかけてくれたりすることもない。けれど視線を感じて振り向くと、聖羅に見られていることがあるのだった。
なんだろう、と、七都は一瞬考えたが、それでもすぐに忘れてしまう。七都にとってそれはたいしたことではなかった。
ずるずると七都は床に手を滑らせ、ぱたん、と横になった。
日が陰りはじめ、辺りが暗くなってきた。窓から差し込む光も徐々に弱くなり、そしてすこし床の色が濃くなってきた、と思ったら真っ暗になるのはすぐだった。
