ゆえに七都に対する聖羅の行動は、今までのパターンから大きく外れていた。

 形骸としての存在でしかなかったはずの聖羅に、七都を厭うという、意志というものが見え隠れしているのだから。

「とりあえず聖羅のことは置いておきましょう。問題は七都ね」

「ええ……」

「いっそ、群青と一緒に行ったらどうかしら。はじめは、自分で探しに行くんだと、泣いて騒いでいたのだし」

 シスターの提案に、百合子は眉を曇らせた。

「けれど群青が出入りしているのはレジスタンスで……」

「そうね。……百合子は七都をレジスタンスに関わらせるのはいや?」

「……ええ。英凛々子の娘、というだけで騒がれます。それにレジスタンスは戦闘組織ですもの……。その主張がどうであれ、まだ若い七都を関わらせたくはないんです。この戦乱で七都はおかあさんをなくしているから、反第一都勢力のレジスタンスに加わってしまう可能性も少なくはないし」

「そうね」

 百合子の危惧するところを簡単に大シスターは肯定する。

「それでも、未来を選ぶのは七都自身なのよ。レジスタンスに深く関わってゆくことになるのか、それともそうではない道を選ぶのか決めるのも」

「大シスター」

 百合子が少し声を強めて大シスターの話を遮る。いつも控えめな百合子に、それは珍しいことだった。

「私は七都にレジスタンスに関わって欲しくない……。あの子が他者をきずつけることを日常としてしまうのは嫌です。レジスタンスの存在そのものを否定するつもりは私にもありません。第七都のひとたちが不本意に貶められているのは事実で、そこからの解放を私だって望まないわけではないけれど、でも彼らは剣を持って、敵だとしたものをきずつけて、命を奪い合う。そんな因業をわたしは七都に背負わせたくないんです。レジスタンスの人たちだけを矢面に立たせて、自分だけが安全なところにいると誹られても仕方がない、勝手な言い分だとはわかっています、けれど……」

 大シスターは、百合子の背をそっと撫でた。

「七都のことは、私もあなたと同じように思っていますよ、百合子。……それでも誰もが、自分の運命は自分で選んでゆくものなのですから」