前述の理由で、優秀な人材を擁する、第七都にはもともとさまざまな戦力があった。

 そしてその中でも、惠暁宮で生まれた、「大将軍のこどもたち」のうちのひとり、英凛々子。

 第七都の英雄とも勝利の女神とも言われた、彼女がいたがゆえに、第七都は負けることはなく、そうして戦も続くことになった。

 しかし第一都赤軍将軍、通称「赤い魔女」の起こした半年前の大火で、第七都は甚大な被害を受けた。

 炎は見境なく街を焼き人を焼いた。一街も四街も住宅地で、非戦闘地帯だったため、戦に関わらぬ女子供達の生命も大量に奪われた。八方から囲まれ火を放たれ、人々は街外へ逃げ出すことすらかなわなかったという。その街で生き残った者はほんのわずかだった。

 そして第一都側が要求した、凛々子の生命と引き替えに、街を焼く炎は漸く鎮まったが、失われたものはもう還らない。

 大シスターは焼かれた街へ足を運び、惨状をその目で見た。陽が沈み空はどこまでも黒いのに、地上は青白い燐光で仄明るく、赤く染まった地面の色を、降りはじめた雨が流していった。

「早いものね……」

 大シスターのためいきを聞きながら、聖羅は無言で灯を点してゆく。

 かすかな風に、蝋燭の火がゆれた。太陽は完全に沈み、玻璃のない窓から見える空には星が瞬きはじめた。

 暗かった聖堂が橙色に照らされて少しあかるくなる。