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琴音さんが少しぎこちない手付きで手伝ってくれて作った夕食を二人で平らげ、デザートにブッシュドノエルを食べた後。
二人でまったりとした時間を過ごす。
会話がなくても心地のいい時間であるとともに……俺が密かに“ある欲”と闘う時間のはじまりだ。
「……ん、っ」
あーもう、無理だ。
触れてしまったら、最後。
「は、惣介さ……っ」
ダメだ。
そんな声で呼ばれたら、もう……我慢できない。
俺は琴音さんの甘過ぎる声を閉じ込めるように、その唇を塞ぐ。
「んん、」
鼻から抜ける声がまた色っぽくて……たまらない。
……いや、でも絶対にこれ以上はダメだ。
……そう思うほど、もっと触れたくなる。
でも、ダメなんだ……!
堪えろ、俺!
「んっ、はぁっ……」
必死な気持ちで唇を離すと、琴音さんが力が抜けたようにパタッと俺の胸に寄り掛かってくる。
抑えていたとは言え、欲のままに触れていたからか、琴音さんの息は上がってしまっていて……それがまた、俺の欲を掻き立てる。
あのことを勢いで言ってしまおうか。
……そうだ、それがいい。
そうすれば、琴音さんにもっと触れられる。
「……琴音さん」
「ん、はい……っ?」
「っ!」
自分に向けられた濡れた瞳にドキン!と大きく心臓が跳ね、それが逆に俺のことを冷静にさせた。
ダメだ……!
もし言って受け入れてもらえなかったら?
もう、キスさえできなくなるかもしれない。
……琴音さんを失うかもしれない。
折角、大切に思える女を手に入れられたのに。
琴音さんの濡れた唇を親指できゅっと拭う。
「……惣介さん……?」
「!あ、いえ……あっ、そろそろ送ります」
「え?あ、もうこんな時間なんですね……」
「……はい。明日からまた仕事ですから」
「ですよね……」
琴音さんに浮かぶ寂しげな表情にまたドキッと心臓が跳ねる。
でも、今度のそれは俺を冷静にさせてはくれなかった。
ダメなのに、ダメなのに……
手が、身体が勝手に動く。
……かわいすぎる琴音さんが悪い。

