*
「あっ、ケーキも買いましょう!ケーキ!」
ガサガサと買い物袋を揺らしながら、琴音さんが無邪気にケーキ屋のディスプレイの前に向かう。
夕食用の買い物をした後、そんなに量も多くないし俺が全部持つと言ったのに、琴音さんは「半分こにしましょう!」と言って持っていってしまった。
「惣介さん、食べたいケーキありますか?」
「ん~やっぱりクリスマスと言えば、ブッシュドノエルですね!」
「……ふふっ」
「え?何か可笑しかったですか?」
ビシッとブッシュドノエルを指差すと、琴音さんがくすくすと笑い出した。
「いえ、私も全く同じこと思ってたんです。クリスマスと言えば、ブッシュドノエルだ!って」
「なるほど。なら、満場一致ですね」
「はい。喧嘩にならなくて良かったです!じゃあ、買ってきますね!」
「あっ、荷物持っておきますよ」
「え、でも」
「琴音さんはケーキというクリスマスに一番重要なアイテムを持ってもらわないといけませんから。ね?」
「……重くないですか?」
「え?これくらい何ともないですよ?琴音さんを抱き上げるくらいの力はありますから」
「えっ!?」
「あ、何なら、試してみますか?お姫様だっこをここで」
「!え、遠慮しておきます!」
「くくっ、じゃあ荷物、貸してください」
「……う、わかりました」
琴音さんはぷぅと頬を膨らませて納得のいかない表情を俺に向けた後、ケーキ屋に向かっていった。
そんな表情も俺のツボにハマる。
……かわいすぎる。
本当に琴音さんは俺の心臓を高鳴らせる名人だ。

