私の期待とは別に、かちゃりと軽い音が目の前に聞こえた時。
「……目を開けてください」
「……は、はい」
耳に入ってきた惣介さんの柔らかい声に、私はゆっくりと目を開ける。
すると、そこには。
惣介さんの指に引っ掛けられたキーホルダー、そして、鍵が見えた。
……惣介さんがいつもこの部屋を開ける時に使っているものと同じ形の鍵と、色違いのキーホルダーが。
そしてその向こうには、惣介さんの優しい笑顔も一緒に。
「ここの鍵です。いつも渡そう、渡そうと思いながら、ずっとポケットに入れてたんですけど……拒否されるのが怖くてなかなか渡せなくて。プロポーズもしたばかりですし。でも……琴音さんの想いを聞けたから」
「……」
「……俺と一緒に、生活してみませんか?」
「!」
「もちろん、琴音さんの準備ができてからで構いませんし、すぐに籍を入れようというわけでもありません。……ただ、俺はいつでも……今すぐにでも、そうしたいと思ってます」
「惣介さん……っ」
「今はただ、これを受け取って欲しいんです。一緒に生活を始めるまでは、いつでも……自由にここに来てください。連絡はいりませんから」
「!」
それは、私が惣介さんの生活に自由に入ってもいい、ということで……信頼されてるって考えてもいいのかな……?
「……こんな大切なもの……本当にいいんですか……?」
「当たり前です。琴音さんだから渡したいんです」
「……本当に……、」
私が鍵を受け取っていいものか手をなかなか動かせずにいると、惣介さんの手が私の手を掴んだ。
鍵は、私と惣介さんの手の間にすっぽりと収まる。

