「……琴音さん」
「……は、はいっ」
「……何で笑うんですか?そんなこと言われて忘れられるわけないでしょう?」
「へ?」
「……はぁ。本当に琴音さんは俺を振り回す名人ですよね」
「っ!」
久しぶりに言われた“名人”という言葉にドキッと心臓が跳ねる。
それに加えて、惣介さんの少し困ったような表情。
……振り回した?
それはどういう意味で……?
困るって意味?
それとも……
「まさか……逆プロポーズされるなんて」
「……逆プ……、ええっ!?」
「しかも俺よりもカッコいい言葉で……男としては、さすがにへこみます」
「そ、そんなつもりじゃ……っ」
待って、逆プロポーズって……!
た、確かに言葉の意味としてはそうとも取れるかもしれないけど……!
惣介さんをへこませるためにプレゼントしたわけじゃないのに!
どうしよう……っ!
はぁ、と溜め息をついて、両手で顔を覆ってしまった惣介さんに、さらに私は慌ててしまう。
「あのっ、惣介さ」
「でも……」
「え?」
「……すごく嬉しいです。一生大切にします。これも、さっきの言葉も」
「惣介さん……っ」
顔を上げて私に向けてくれたその笑顔には一点の曇りもなくて。
ただただ、喜んでくれている表情に私は泣きそうになってしまった。
心から喜んでもらえたんだって、やっと思えたから。

