捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。【エピローグ&番外編*野いちご用】

 

「……あの、今開けてもいいですか?」

「っ、あっ、ど、どうぞ……」


私は手のひらを上に向けた状態で両手を前に出して、どうぞどうぞと促す。

……でも、心臓はばくばくだ。

惣介さんが紙袋の中から、ラッピングされた箱を取り出す。

その重さに気付いたようで惣介さんは首を傾げながら、ラッピングを丁寧にぴりぴりと剥がしていく。

そして……箱を、開けた。


「…………これ、って」

「……」


目を丸くした惣介さんが箱の中から取り出したのは……ステンレスのバンドで文字盤もスタイリッシュな腕時計。

そう。プレゼントはチョコレートではなく、腕時計だ。

そんなに高いものではないとはいえ、重いと思われるのを覚悟して、選んだもの。


「……たまたま見つけたものだったんですけど、一目惚れだったんです。絶対に惣介さんに似合う、って思って」

「……」

「腕時計をプレゼントするなんて重いかもって思ったんですけど……一緒に刻みたくて」

「……刻む?」

「……これからもずっと……惣介さんと一緒の時間を刻んでいきたいと思ったんです。この時計が、一秒一秒ゆっくりと時を刻むように」

「……」

「…………って、やっぱり重いですよねっ!今の、忘れてください!あははっ、ははっ……」


いざ気持ちを口にするとやっぱりすごく重く思えてきて、私は誤魔化すように笑い飛ばしていた。

……そこには、惣介さんに嫌われたくないという気持ちがあった。

急に怖くなってしまったんだ。