「あ、あの……、惣介さん」
「……何ですか?もっとくっつきたいですか?」
「!え、えっと……」
「俺は大歓迎ですよ?」
「あ……っ、」
耳元で甘く囁くような言葉と共に、するりと服の中に入ってきた惣介さんの大きな手。
背中を直接するすると撫でられて、じんわりと身体の奥底から熱を持ち始めるのを感じる。
このままこの温かい手に、胸に、惣介さんに包まれたい。
そう思ったけど、まだはっきりと残っている理性がその思考を止める。
やっぱり“あれ”は今渡しておきたい。
日付が変わってしまったら今日誘った意味がなくなるし、何よりも、今の私の気持ちをちゃんと伝えたいから。
「そっ、惣介さん……っ、ちょっと待ってください……っ」
「……ちょっとってどれくらいですか?もう、止まりませんけど」
「そ、そこは止めてください!ぜひ!すぐに済みますから!」
「えー……」
私の言葉に、不満そうにも腕の力を緩めてくれた惣介さんの腕の中から、私はするりと抜け出す。
惣介さんの表情を見ると絶対に負けそうだと思って、すぐに足元に置いていたバッグに目を向けた。
潰れないようにバッグの中に丁寧にしまっておいたあるものを取り出す。
……よ、よし。勝負だ!

